2020年12月17日

はじめに(目次)

*SSブログの閉鎖に伴い、引っ越しをしました。もし「お気に入り」に登録されているなら変更をお願いします。

シャーマンとシャーマニズムに関して様々なテーマで紹介するサイトです。

本ブログは学術的なものではなく(自己流の解釈も多く含みます)、物語のように読んでもらうサイトです。
伝統的なシャーマニズムだけではなく、現代の「ネオ・シャーマニズム」も扱っています。
基本的には、脱魂(エクスタシー、飛翔)型のシャーマニズムが中心です。

シャーマンは共同体と霊的世界の間を媒介して、共同体のために尽くす存在ですが、シャーマンの修行には求道的な側面もあって、その意味ではシャーマンは神秘家です。
多くの社会では、「シャーマン」を示す呼び名は、「賢者(智恵を持つ者)」を意味します。

一般に、シャーマンの世界観は、彼が属する共同体の世界観の深い部分を体現しています。
ですが、「世界観」というのは幻想であるとして、それを否定する一種の「空」の思想を持っている場合もあります。
当サイトでは、こういったシャーマニズムを「高等シャーマニズム」、「智慧の道」と表現します。
「ネオ・シャーマニズム」の多くはこの傾向を持っています。

シャーマニズムの本質は、自然や生物との人格的で直接的なコミュニケーションであり、問題解決法であると思います。
シャーマンが持つこの「大いなるつながり」は、すべての人間にとって、意識下の現実です。
そして、シャーマンが視る世界は、概念的な思考では捉えられない、力と変容の次元、生成しつつある可能性の次元の現実であり、その象徴的、物語的表現です。

また、当サイトでは、シャーマニズムの背景となる、様々な伝統的な文化の世界観も紹介します。
伝統的な世界観は、現代の常識からすれば、非科学的で非合理的です。
ですが、それは象徴でしか表現できないような、無意識を含めた精神の働きの全体性を反映し、その成長を促してくれます。


==伝統的な部族シャーマニズム==

<シャーマニズムの概要>



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<イニシエーション>


<治療と霊的存在>


<様々な仕事の方法>


<シャーマニズム的な神話とコスモロジー>



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==ネオ・シャーマニズムと高等シャーマニズム

<ネオ・シャーマニズム>

マイケル・ハーナー(南北アメリカ)
カルロス・カスタネダ(メキシコのトルテック)
ドン・ミゲル・ルイス(メキシコのトルテック)
アルベルト・ヴィロルド(南アメリカ)
サージ・カヒリ・キング(ハワイのフナ)
アーノルド・ミンデル(心理療法)

<高等シャーマニズム(智恵の道)>



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==伝統文化==

<伝統文化のコスモロジー>



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<その他の雑文・雑論>



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*姉妹サイト「神話と秘儀」、「世界の瞑想法」、「仏教の修行体系」、「夢見の技術」、「神秘主義思想史」もご参照ください。
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様々なシャーマニズム

「シャーマニズム」という言葉は、狭義では、中央~北アジアのアルタイやシベリア地方の、部族社会の伝統的な宗教の形を表します。
ですが、他の地域、特に、北ヨーロッパや東アジア、南北アメリカなどを含めて、世界的にシャーマニズムの要素があります。

シャーマニズムは、狩猟を行っていた後期旧石器時代に生まれた、世界的に普遍的な宗教形態だったのではないでしょうか。
その後に、農耕文化、牧畜文化などが発生しても、継承され、変形されて、生き延びてきました。

ですから、「シャーマニズム」は、広義には、有史以前から現代にいたるまで、世界的に存在する普遍性の高い宗教的現象の形だと言うことができます。
世界の各部族が持つ文化の形が多様なのに比べて、それぞれのシャーマニズムの形には、驚くほどの共通性があります。

典型的なシャーマニズムの文化を持つ部族社会には、一つの共同体に最低一人の「シャーマン」がいます。
そして、「シャーマン」が、共同体と霊的世界、霊的存在との間の様々なコミュニケーションを担う中心的存在となります。
部族によっては、秘密結社のリーダー達も、部分的にその役目を担いますが。

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*シベリアのシャーマンの絵(シャーマン)


<脱魂型シャーマニズムと憑霊型シャーマニズム>

一般に、シャーマンは「トランス」状態(変性意識状態)になって霊的存在とコミュニケーションを取ります。
この「トランス」には2種類があります。

「脱魂(エクスタシー)」と「憑霊(ポゼッション)」です。
「脱魂」は、自身の霊魂を霊的世界に「飛翔」させることです。
「憑霊」は、が霊的存在を「憑依」させることです。

狭義には、「脱魂」を行う者のみを「シャーマン」と呼び、「憑霊」を行う者は「霊媒(メディウム)」と呼び分ける場合もあります。

一般に、狩猟・遊牧文化では、「脱魂型」のシャーマンが多く、たいていは、男性シャーマンです。
それに対して、農耕文化では、「憑霊型」のシャーマンが多く、たいていは、女性シャーマンです。

それは、狩猟・漁撈文化の男性シャーマンは、霊的世界に行って「動物の女主」を呼ばれる女神との関係を築く必要があるからです。
ただ、牧畜・遊牧文化では、女神の存在は希薄になり、代わって天上の男神が重視されるようになります。

そして、農耕文化の女性シャーマンは、太陽神や嵐神といった恵みをもたらす男性神(の霊力)を田畑に呼ぶ必要があるからです。

伝統文化では、男性は、狩猟や葬儀などの「死」に関わる仕事します。
これは、この世からあの世へ霊魂を移動させることであり、「脱魂」も同じです。

一方、女性は出産や農耕・採集などの「生」に関わる仕事をします。
(本格的な農耕社会は男性も農耕の仕事をしますが、両方行っている社会ではこのような分担が一般的です。
また、草木を伐採して農地を作る作業は、「死」に関わるので男性が行います。)
これは、あの世からこの世へ霊魂を移動させることであり、「憑霊」も同じです。


宗教学者のエリアーデは「脱魂(エクスタシー)」を、シャーマニズの基本原理として重視しました。
人格の成長という観点から考えると、意識の分裂・多人格化を導く可能性のある「憑霊」よりも、意識の拡大や統合を導く傾向の強い「脱魂」の方が興味深いと思えます。

そのため、当ブログでは、シャーマニズムの原初的形態でもある「脱魂」型のシャーマニズムを中心に扱います。


<ネオ・シャーマニズムと高等シャーマニズム>

一般の部族社会のシャーマンは、その部族特有の世界観を共有して、その世界観や部族の社会構造を動かせないものだと考えます。
そして、その中で、部族全体の安定のために仕事を行います。

当ブログでは、この部族社会に根ざした伝統的なシャーマニズムを「部族シャーマニズム」と呼びます。


それに対して、1960年代以降に、アメリカのニュー・エイジ運動とも連動しながら生まれた、新しいシャーマニズムの運動は、総称して「ネオ・シャーマニズム」と呼ばれます。

ですが、「ネオ・シャーマニズム」の中には、伝統的なシャーマニズムを継承している部分もあるので、厳密に分けることはできません。

「ネオ・シャーマニズム」は、「部族的シャーマニズム」と違って、主に、個人の求道や病気治療を目的とします。


「ネオ・シャーマニズム」の中には、特定の社会の世界観を、幻想として否定するような思想もあります。
つまり、仏教の「空」思想ように、世界観を相対化し、それらを超えることを目指します。

当ブログでは、こういった思想傾向を持つものを「高等シャーマニズム」と呼びます。
(「高等」という言葉には良い印象はありませんが、「高等魔術」という言葉からとってきました。)

「空」の認識にこだわらず、高い霊的成長(不死性)を目指すようなシャーマニズムも含めて、「高等シャーマニズム」と呼んでもよいでしょう。

「高等シャーマニズム」が、歴史的にいつ生まれたかは分かりません。
「フナ」や「トルテック」のように、「高等シャーマニズム」に当たる「ネオ・シャーマニズム」の中には、伝統的なシャーマニズムを継承していると主張するものがありますが、その客観的な証拠はありません。

ですが、国家レベルの文化を経ながら、そこから離れ、より普遍的な方向に発展したシャーマニズムの伝統があったとしてもおかしくはありません。
そのような宗教運動が存在したことは認められています。

また、高い霊的成長をほのめかす伝統は、古代中央アメリカ(マヤ、トルテカ、テオティワカン)のシャーマン的文化にも存在します。


*「ネオ・シャーマニズム」や「高等シャーマニズム」については、別のページをお読みください。
>「高等シャーマニズムとは
>「 アーバン高等シャーマニズムの思想と実践
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シャーマンの仕事

伝統的なシャーマンは、祭司、神秘家、霊媒、呪術者、呪医、占い師など、多くの顔を持ちます。

ですが、一言で言えば、シャーマンは霊魂の専門家と言うことができます。
シャーマンは、地上、地下、天上の3つの世界を移動し、精霊や霊魂と交流し、それらを操作します。

重要なのは、シャーマンは個人的な求道を行なう神秘家ではなくて、部族のために尽くす存在だということです。
シャーマンは様々な精霊や魂をコントロールすることで、部族のメンバーを含めて、部族全体の健康や安全、調和、豊穣を守る存在です。

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*北米ブラックフット族の呪医(シャーマンの世界)

シャーマンの仕事は、抽象的に表現すれば、天上や地下と地上との間に、言葉と魂を運ぶことだと言えます。
つまり、あの世とこの世、神霊の世界と共同体の間の、魂(生命)の循環と、メッセージ(意志)の伝達・コミュニケーションを正しく行わせることです。
具体的には、以下のようなものです。

1 不猟・不漁・不作や天候の不良などの問題の解決
2 部族のメンバーの精神的、身体的な病、怪我の治療(ヒーリング)
3 人間の死と誕生を助ける
4 霊的世界とのコミュニケーションを担う
5 呪術的な攻撃から共同体のメンバーを守る


1は、神や「動物の主」がいる天上や地下世界に行って、供犠の動・植物の魂を届け、豊穣を懇願したり、不猟の理由を聞き出したりして解決します。
より積極的な行為として、「動物の主」と戦ったり、動・植物の魂を盗んできたりすることもあります。


2は、その理由によって解決法も様々です。

「邪霊」の侵入が原因の一時的な疾患の場合は、これを霊視して、「補助霊」の助けを得ながら、吸い出して、追い祓います。

患者の「守護霊」が離れたことが原因の長期的な疾患や、生命力の低下などの疾患の場合は、天上や地下などの他界に行って探し出し、「守護霊」を連れ戻して患者の体に入れ直します。

患者の魂が彷徨い出て、意識を失うような死の危険もある重度の疾患の場合は、地下世界に行って魂自体を連れ戻します。
悪霊が魂を盗んだ場合はこれと戦います。


3は、まず、死んだ人間の魂に対しては、死んだこと、生者と別れないといけないことを理解させます。
そして、魂が行くべき死者の世界へと道案内します。

赤ん坊が欲しい時には、地下世界の女神や祖神などのところに行って頼んだり、魂を盗んできて女性の胎内に入れたりします。
難産の場合は、うまく出産できるように助けます。


4は、まず、飛翔や憑依によって、あるいは、占いによって、神々や祖霊から神託をもらうことです。
逆に、飛翔して神々などに頼みごとを伝えたり、何らかの知識を得たりすることもあります。
また、供犠とされる動物の魂を天の神に届けます。


5は、敵対する部族の呪術師や黒魔術師からの攻撃を見破って防ぎ、逆に、相手の呪術師や部族のメンバーを攻撃することです。
あるいは、精霊からの攻撃を防ぐこともあります。
これらの場合は、病気治療の場合と同じく、その時々に適した「補助霊」を使います。
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