確かに、世襲や、先代シャーマンによる選別、自らの希望によってなど、様々な形でシャーマンになる者が決められることはあります。
ですが、最も本質的なのは、霊的存在による選別です。
本来的なシャーマンは、通常、精霊達が次のシャーマンを決めて、それを先代のシャーマンに告げます。
そして、先代のシャーマンが新入りのシャーマンを仕込むのです。
世襲で選ばれる場合も、長子相続ではなく、精霊が選ぶこと、つまり、「召命」が条件となります。
この教育は現実世界だけでなく、先代シャーマンや精霊達によって、夢やトランス状態の霊的ヴィジョンの中でも行われます。
シャーマンの本質的な教育は、霊魂の世界でしか行えないのです。
ですが、先代シャーマンが生きているうちにシャーマンの技術を伝えられるとは限りません。
こういった場合、先代シャーマンや先祖のシャーマンが魂の世界からヴィジョンを通じて教育を行なうのです。
偉大なシャーマンは魂の世界に留まり続けて、再生することがないと考えられています。
こういった偉大な先祖シャーマンが教えるわけです。
シベリア、アルタイのシャーマニズムの教えを受けたオルガ・カリティディーによれば、本当のシャーマンは「世襲」されるものです。
ですが、それは父が子を選んで教えるといった地上的な「世襲」ではありません。
代々のシャーマンは同じ精霊(守護霊)や先祖シャーマンの導きでシャーマンとなります。
ですが、代々のシャーマンは別の人間だとしても、同じ精霊(守護霊)と同じ力を身につける点で、同一人格のシャーマンになると考えることができるのです。
モンゴル、シベリアのソーラ族の女性の系統のシャーマンの場合、地上の夫とは別に地下の精霊と結婚をします。
そして、この同じ地下の精霊が代々の女性シャーマンと結婚をするのです。
一般に、幼い頃から孤独を好む夢見がちな性格を持っている者が、シャーマンに選ばれる傾向があります。
ですが、シャーマンに興味を持たず、シャーマンになりたくないと思っている者が、「召命」されることも多いのです。
この場合、本人が否定しても、霊的な世界の精霊達、先祖のシャーマン達の強い誘いによって心身が不調になって、しかたなくシャーマンにならざるをえなくなります。
通常、シャーマンになることを受け入れるまで、長い期間に渡って、疾患的な状態を経験します。
これは「シャーマン病」と呼ばれ、幻覚、無気力、夢遊、ヒステリー性発作、けいれん、動物的行動などを伴います。
この状態は、トランスによるヴィジョンを引き起こし、シャーマンとしてのイニシエーションや教育につながります。
精霊や死んだシャーマンの働きかけを、新入りシャーマン自身の無意識の働きであると合理に解釈することもできるでしょう。
シャーマンになることに対する部族からの期待を無意識が感じていたり、自分の性格が一般的な社会に不適応であると無意識で判断していたりして、無意識がシャーマンになる道を選ぶのだと、解釈することもできるわけです。
ですが、生きていた先代シャーマンからの教えを受けずに、知識を持たない者が、ヴィジョンの中からの教育だけで、高度な技術や知識を持つ立派なシャーマンになる場合もあるのが不思議です。
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