アルベルト・ヴィジョルドがペルーの高名なシャーマンのドン・エドゥアルド・カルデロンから受けた集団的なイニシエーションにおける「浄化」の儀礼を紹介しましょう。
これはインディアンのシャーマンが、シャーマンの道をインディアン以外の人間に伝えるために、様々な国籍の人間を集めて行われた儀礼の報告です。
この儀礼の目的は、シャーマンの道を歩むにあたって、イニシエーションの際に、その人が持っている過去の心の傷を癒すことです。
シャーマンは、一定の意味で、偏りなく、客観的に、霊的な世界を見なければいけません。
ですから、トラウマを持っていると、シャーマンの仕事に大きな支障となってしまうのです。
その「浄化」の儀式は、「力の場」と呼ばれる特別な場所の一つである、地上絵のあるナスカ高原で行われました。
そのシャーマンによれば、ナスカに描かれた動物絵は、すべてシャーマンが獲得すべき力と知恵(スピリット・ヘルパー)を表しているのです。
そして、古くからの言い伝えによると、ここは「浄化」の場所だそうです。
深夜、「針と糸」と呼ばれる螺旋を含む絵の中心部に、シャーマンが様々な呪物(パワー・オブジェクト)を並べた祭壇を設けます。
次に、儀式の成功を土地の霊、東西南北の四方を司る霊や様々な霊などに懇願します。
そして、幻覚効果のある液体を、参加者全員が飲んで、儀式を始めます。
まず、イニシエーションに臨む人物は、各人が獲得すべき力を示す「パワー・オブジェクト」をもらって、中心部から螺旋を歩んでいきます。
すると、歩んでいる間に、浄化されるべきものが各人の周りに現れ、それが暗闇の中で霊視されます。 浄化されるべきものは、精神的外傷や、取りついた霊的存在などです。
それらを霊視するだけで、癒やされる場合もありますが、障害が強い場合は、火を使った儀式を行います。
治療されるべき人間は、剣を持ち、地面に描かれた輪の中に入ります。
すると、シャーマンが、歌とガラガラでその原因となるものを呼び集め、輪の中にある薪に火がつけます。
治療されるべき人間は、その上を何度も飛び越えます。
最後に、残り火を踏みつけて消します。
その後、幻覚効果のある液体を飲んで、剣を高く掲げてその力を自分のものとします。
シャーマンは、障害の原因について問いただしたり、解釈したりする場合もあります。
ですが、原因を理解することは重要ではなく、むしろ邪魔になると考えることが多いのです。
「浄化」の儀式の本質は、トラウマを具体的なイメージとともに客観視し、それを消すような象徴的行為を行うことにあるようです。
ちなみに、一般に「螺旋」は、中心に向かって進むのは、冥界=死に至ることを象徴します。
中心から進むのは、地上=再生に至ることを象徴します。
「浄化」の儀礼の意味を考えると、まず、中心に向かって進むべきではないかと思います。
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