2020年10月03日

シャーマンの衣装


アルタイやシベリアのシャーマンは、一人一人、儀式の時に使う特別な衣装を持っています。
衣装には、上下の服、マント、胸あて、帽子、頭巾、靴、装飾品などなどがあります。
そして、様々な飾り(金属製品や革製品)が付けられ、刺繍やペイントの絵が描かれています。

これらの衣装は、コスモロジーやシャーマンの身体の聖性を反映した、一種の身体曼荼羅のような存在です。
そして、ここには諸霊が招かれます。

以下、アルタイ、ツングースのシャーマンの一般的な衣装の特徴について、記します。

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*衣装を着たシベリアのシャーマンの絵


アルタイ地方のシャーマンの衣装は、全体として鳥を表現しています。
肩から垂れている総は翼、背中に垂れている長い帯条は鳥の尾を表しています。

これは、シャーマンが「パワー・アニマル」の鳥に変身したり、その力を借りたりして飛翔することを表現し、また、それを保証するものでしょう。


ツングースのシャーマンの衣装には、シャーマンの骨(骸骨)を表す金属製品などが付いています。

これは、おそらく、イニシエーションの時に、シャーマンの骨格が作り変えられて、特別な骨格になっていること、つまり、シャーマンの再生した特別な身体を表現しているのでしょう。


また、シャーマンの衣装には、悪霊を追い払うための象徴的な飾りが多数付けられています。

例えば、袖や背中に鈴やガラガラが付いていて、これを鳴らすことで悪霊を追い払います。
背中には金属製の弓矢などの武器が付けられています。
金属製のクマや鷲などの鉤爪が付けられています。
ユルゲン(天神)の娘たちのような主要な神霊の像が付いています。


シャーマンの衣装は、その宇宙観を表現しています。

衣装には、シャーマンが飛翔して体験した、世界やその精霊の絵が描かれています。

また、帽子には、天を表現する動物である猛禽類の羽などが付いています。
上着の肩にも、鳥や太陽の象徴品が付けられています。

一方、上着の下部や靴には、地下世界に関わる動物である、ヘビやクマを象徴する品が付けられています。

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*シベリアのシャーマンの衣装
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2020年10月02日

浄化の儀式


アルベルト・ヴィジョルドがペルーの高名なシャーマンのドン・エドゥアルド・カルデロンから受けた集団的なイニシエーションにおける「浄化」の儀礼を紹介しましょう。
これはインディアンのシャーマンが、シャーマンの道をインディアン以外の人間に伝えるために、様々な国籍の人間を集めて行われた儀礼の報告です。

この儀礼の目的は、シャーマンの道を歩むにあたって、イニシエーションの際に、その人が持っている過去の心の傷を癒すことです。
シャーマンは、一定の意味で、偏りなく、客観的に、霊的な世界を見なければいけません。
ですから、トラウマを持っていると、シャーマンの仕事に大きな支障となってしまうのです。


その「浄化」の儀式は、「力の場」と呼ばれる特別な場所の一つである、地上絵のあるナスカ高原で行われました。
そのシャーマンによれば、ナスカに描かれた動物絵は、すべてシャーマンが獲得すべき力と知恵(スピリット・ヘルパー)を表しているのです。
そして、古くからの言い伝えによると、ここは「浄化」の場所だそうです。

深夜、「針と糸」と呼ばれる螺旋を含む絵の中心部に、シャーマンが様々な呪物(パワー・オブジェクト)を並べた祭壇を設けます。
次に、儀式の成功を土地の霊、東西南北の四方を司る霊や様々な霊などに懇願します。

そして、幻覚効果のある液体を、参加者全員が飲んで、儀式を始めます。

まず、イニシエーションに臨む人物は、各人が獲得すべき力を示す「パワー・オブジェクト」をもらって、中心部から螺旋を歩んでいきます。

すると、歩んでいる間に、浄化されるべきものが各人の周りに現れ、それが暗闇の中で霊視されます。 浄化されるべきものは、精神的外傷や、取りついた霊的存在などです。


それらを霊視するだけで、癒やされる場合もありますが、障害が強い場合は、火を使った儀式を行います。

治療されるべき人間は、剣を持ち、地面に描かれた輪の中に入ります。
すると、シャーマンが、歌とガラガラでその原因となるものを呼び集め、輪の中にある薪に火がつけます。

治療されるべき人間は、その上を何度も飛び越えます。
最後に、残り火を踏みつけて消します。

その後、幻覚効果のある液体を飲んで、剣を高く掲げてその力を自分のものとします。

シャーマンは、障害の原因について問いただしたり、解釈したりする場合もあります。
ですが、原因を理解することは重要ではなく、むしろ邪魔になると考えることが多いのです。

「浄化」の儀式の本質は、トラウマを具体的なイメージとともに客観視し、それを消すような象徴的行為を行うことにあるようです。


ちなみに、一般に「螺旋」は、中心に向かって進むのは、冥界=死に至ることを象徴します。
中心から進むのは、地上=再生に至ることを象徴します。
「浄化」の儀礼の意味を考えると、まず、中心に向かって進むべきではないかと思います。
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2020年10月01日

ドラムの魂の獲得

シャーマンにとってドラムは天上世界や地下世界に飛翔するために必要な、非常に重要な道具です。
ドラムは、その音が飛翔の推進力として働きます。

他にも、精霊を招くために使ったり、トリップする際の舟として使ったたり、霊を救い上げる容れ物として使われたりすることもあります。
ドラムはシャーマンの象徴でもあります。
ですから、ドラムは自分だけのものでなくてはなりません。

一般に、アルタイ、シベリアのシャーマンのドラムは、片方に鹿か馬の皮を張ります。
ドラムに使う木枠は、人里離れた樹から取り、その樹には供犠獣や酒を供します。
場合によっては、雷が落ちた樹や、曲がった樹を使います。
神話的には「世界樹」から作られるべきものです。

オルガ・カリテディーによれば、アルタイの新入りシャーマンが、自分のドラムを獲得する際には、そのドラムの皮である鹿の魂そのものをドラムに入れなければなりません。
これは、捕まえた鹿の皮から、物理的にドラムを作った後の作業として行います。

その新入りシャーマンは、すでに亡くなっていた先代シャーマンによって、この作業を助けられました。
彼は、先代のシャーマンによって、トランスのヴィジョンに引き込まれたのです。

彼は、ヴィジョンの中で、その鹿が生まれる直前にタイム・トリップしました。

その子鹿が生まれるやいなや、新入りシャーマンは自分で子鹿を捕まえます。
そして、それを現代に持ち帰り、そのまま、現実世界のドラムに、手でその魂を押し込んで入れます。
こうしてドラムは魂を持ったものとなって初めて、シャーマンのトランスを助ける道具となるのです。

一般に、ドラムには、他の複数の精霊を入れることもあります。

その後、ドラムには、シャーマンが飛翔して見た世界の様子や、地図を描きます。

また、シャーマンが亡くなった時には、誰かがドラムを破り、その魂を返してやらなければなりません。

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*南シベリアのシャーマンの太鼓に描かれた図(シャーマニズムの世界)
posted by morfo3 at 08:24| Comment(0) | イニシエーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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