2020年10月14日
出産を助ける
パナマのタナ・インディアンのシャーマンが行う、難産をサポートする行う方法を紹介します。
タナ・インディアンは、身体の部位、臓器にはそれに対応する精霊がいると考えます。
ちなみに、中国の道教にもこういった考え方があります。
そして、身体に問題がある時は、この精霊は悪い敵となっているとみなします。
そのため、シャーマンは、難産の時に、産婦の出産を助けるために、子宮の精霊である「ムー」と戦います。
シャーマンは、産婦が横たわる側で、「ネレガン」と呼ばれる精霊(パワー・アニマルやスピリット・ヘルパー達)を呼び出します。
その中には、穴を掘るのが得意なアルマジロの姿の精霊もいます。
そして、彼らに、黒い玉、赤橙色の玉、虎の骨、アルマジロの骨、銀のネックレス、先の尖った円錐形の帽子などの武器を与えます。
準備が整うと、ネレガン達が産道の中に入っていきます。
まず、帽子で産道を広げていきます。
すると、産婦の心も明るくなります。
シャーマンは、産婦や同席している人達に、言葉でネレガン達の行動を語ります。
それは、ネレガン達が自然の道を進んでいくように語られます。
多分、実際に、シャーマンがトランス状態で見ている風景でしょう。
ネレガン達が一列になって進んでいく…
曲がりくねった道を進んでいく…
低い山にたどり着いた…
峰を越えていく…
産
といった具合です。
婦の痛みはワニやタコの姿で現れます。
そして、ムーは、黒い虎や赤い動物などの姿で現れ、敵意を示します。
ネレガン達は、敵を鉄の鎖で縛り上げていきます。
そして、子宮に到達します。
すると次に、ネレガン達は、胎児を連れて、4人で横に列をなして、子宮や産道を広げながら戻ってきます。
以上ですが、現代人からすれば、これはシャーマンが行う儀礼や治療の中でも、とりわけ奇妙に思えるものでしょう。
難産の理由やその痛みが悪い精霊として人格化され、それを排除する物語がイメージ豊かに展開されています。
それが、心理的、呪術的な効果を生み出します。
シャーマニズムの本質を考える上で、とても興味深いものではないでしょうか。
2020年10月13日
供犠の動物の魂を天上に送り届ける
シャーマンは、供犠祭の時に供犠の動物の魂を天神に送り届けます。
このページでは、アルタイのシャーマンが行う、この儀式の方法を紹介します。
1日目
まず、中央に白樺の樹が突き出た天幕を設置します。
その樹には、9層の天に対応する9つの刻み目をつけます。
シャーマンが天界を上昇する時、地上ではその刻み目を一つずつ昇ります。
供犠のために明るい色の馬を選びます。
そして、「頭を持つ人」と呼ばれるサポート役に渡します。
天幕の中で、樹の枝を火に投げ入れて、太鼓を煙でいぶします。
そして、精霊を呪文で呼び集めて、一つ一つその名前を呼んで、太鼓の中に入れます。
これらの精霊は飛翔の時に援助してくれる精霊です。
そして、天幕から悪霊を追い出します。
これらは次の日に行うこともあります。
シャーマンは、その馬の魂を体から追い出して、逃げた馬の魂を、鷲の霊に乗って追いかけます。
現実の世界では、鷲の形の案山子に乗ってそれを示します。
そして、馬の魂を捕まえて、供物として第九天の天神のところにとどまるように命じます。
その後、屠殺し、儀礼的に食します。
2日目
天幕の中で火を炊きます。
そして、供物の肉を、太鼓の霊や火の霊などの諸霊や、諸霊を象徴する賓客達に饗応します。
次に、シャーマンの衣服を着て、様々な精霊、天上の神々や英雄達、そして、天の鳥に呼びかけます。
その後、天幕の守門の精霊の案内で、天上に旅立ちます。
シャーマンが供犠の馬の魂に乗って、天に旅立ちます。
この時、シャーマンは、地上では白樺の樹の刻み目を昇って、シャーマンの魂が天を上昇していく様子を、演じながら説明します。
第三天では、疲れた馬から降り、鷲を呼び出して、乗り代えます。
天の各層で、その層の霊達と様々なやりとりをし、捧げものをしたりして上昇をしていきます。
現実世界では、白樺の樹の9つの刻み目をひとつずつ昇りながら、諸天での様子を演じ、語ります。
最高天に至ると、天神バイ・ユルゲンに供犠を受け取ってもらうように確認します。
同時に、その年の作物の豊凶を聞いてから、帰ります。
3日目
供物の酒を白樺の樹にかけます。
2020年10月10日
呪術的攻防
ここに紹介するのは、モモル族とヌユルムナル族のシャーマンの呪術戦の模様を、エヴァンキ族のシャーマンが人類学者(多分)のA・N・アニシモフに解説したものです。
様々な精霊が登場する驚異の世界です。

図の真ん中には川が流れていて部族を分けています。
下方のモモル族の土地の上部には、「土地の主」(5)、トナカイの「守護霊」(6)、「見張り」の精霊(7)がいます。
まず、上方のヌユルムナル族のシャーマン(14)とその助手(15)が、木に穴を開ける虫の姿の「攻撃霊(魔法の矢)」を、モモル族にめがけて送りました。
波線(16)が攻撃霊の進んだ道です。
「攻撃霊」は爬虫類の姿をしたモモル族の土地の「見張りの精霊」(7)の間を気づかれずに通り抜けて、モモル族の一人(17)の内臓に潜り込み、病気にします。
モモル族のシャーマン(21)は病気の原因を探って、カモ(23)とシギ(24)の姿をした「スピリット・ヘルパー」を患者に送りました。
実線(25)がその進んだ道です。
「スピリット・ヘルパー」が虫を取り出すために内臓にくちばしを突き刺すと、虫の「攻撃霊」は患者から飛びだして逃げます。
モモル族のシャーマンは新たな「スピリット・ヘルパー」を送って、ナイフと先の割れた形の棒の「スピリット・ヘルパー」(26)が「虫の攻撃霊」を捕まえます。
次にフクロウの姿をした「スピリット・ヘルパー」(27)が「虫の攻撃霊」を呑込み、冥界の淵(28)まで飛んで運び、穴から落としました。
次に、モモル族のシャーマンは報復に移りました。
彼は双頭のカワカマスの姿をした「攻撃霊」(29)をヌユルムナル族の一人(32)に送り、「攻撃霊」はその魂(34)を盗み出します。
一方で、ヌユルムナル族の「攻撃霊」に破られたポイントを、カラマツの精霊の棚(35)で防御を固め、割れた棒の「見張り」の精霊(36)をつけます。
最後にモモル族の霊のために動物の生贄を捧げ、その皮(38)を吊しました。