2020年10月21日

アーノルド・ミンデル

アーノルド・ミンデルが発展させた「プロセス指向心理療法」は、彼の独創的なアイディアによって、心理療法を新しい次元へ、多方向へ、統合的に拡張したものです。
また、それは、ネオ・シャーマニズムやトランス・パーソナル心理学と方向性を共有し、それらを包含しています。

ミンデルは、シャーマニズムの影響を受けていて、「シャーマンズボディ」という著作もあります。
ミンデルの言う「プロセス」とは、その本質において、シャーマンがトランス状態の身体で体験するリアリティでもあります。

プロセス指向心理学は、イメージや言語以前の微細なリアリティに対する直観を、24時間ずっと自覚し続けることを目指します。
ミンデルはそれを「24時間の明晰夢」と表現しますが、それがチベット仏教の「大いなる覚醒」、ヒンドゥー教の「サハジャ・サマディ」、タオイズムの「無為」であるとも書いています。
ですが、これは、当ブログの表現で言えば、「高等シャーマニズム」や「高位イニシエーション」が目指す境地でもあると思います。


このページの記事は、姉妹サイトの記事「アーノルド・ミンデルのプロセス指向心理学」と「プロセス指向心理療法のワーク」を、シャーマニズムをテーマとして再編集してまとめたものです。

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<ミンデルの歩み>

アーノルド・ミンデルは、1940年にニューヨークで生まれ、マサチューセッツ工科大学で応用物理学を学びました。

ですが、心理学への転向を志し、スイスのチューリッヒにあるユング研究所で分析心理学を学びました。
そして、1970年には、オハイオ州のユニオン大学院で博士課程修了し、その後は、ユング心理学研究所で分析家として活動しました。

ミンデルは、「身体症状」などを「夢」と同一のものとして捉え、それが自我を相対化する知恵であると考えるようになりました。
ミンデルは、これを「ドリームボディ」と名付けました。
そして、1980年代初頭に、同僚と共に「プロセス指向心理学」のワークを始めました。

1980年代後半には、妻のエイミーとアメリカに戻り、1990年、オレゴン州ポートランドに、「プロセス・ワーク研究所」を設立しました。

その後も、ミンデルは、次々と新しい観点、新しいワークを生み出し、自身の心理療法を進化させ、著作も次々と出版し続けました。

1993年には、「シャーマンズボディ」を出版し、カスタネダを含むシャーマニズムの思想とプロセス指向心理学を統合しながら、「ドリームボディ」を環境内の存在としての「シャーマンズボディ」に拡張しました。

2000年には、「24時間の明晰夢」を出版し、イメージ以前の微細な(センシェント)直観的な次元の気づきを常態化する「24時間の明晰夢」を提唱しました。

そして、2001年には、プロセス指向心理学を体系的した「プロセス指向のドリーム・ワーク」を出版しました。

また、2007年には、プロセス指向心理学を、量子力学、タオイズム、シャーマニズムと統合して「道の自覚」をテーマとする「大地の心理学」を出版しました。


<プロセス>

ミンデルは、環境とつながった心身が、全体として変化する体験の流れを、「プロセス」と呼びます。
ミンデルは、それを「タオ」とか「大河の流れ」とも表現するように、それが人間を越えた環境内の存在であることを強調します。

ミンデルは、2つの「プロセス」を区別します。
自分が同一化している「一次プロセス」と、排除して周縁化された「二次プロセス」です。
そして、2つのプロセスを隔てる壁を「エッジ」と呼びます

プロセス指向心理療法のワークでは、「二次プロセス」を感じ、それになったり、それとコミュニケーションをとったりします。

「二次プロセス」になかなかアクセスできない場合は、「エッジ」を対象にして、同様のワーク行います。
「エッジ」を橋とイメージしてそれを渡ることを想像したり、「エッジ」を擬人化してコミュニケーションしたりするのです。
「エッジ」を渡る時に、人は変性意識状態になります。

シャーマニズムの観点から見れば、「一次プロセス」は日常の自己、「二次プロセス」はトランス状態の自己です。
「エッジ」は、「地下世界」や「天上世界」に至るための「トンネル」や「穴」のような存在でしょうか。

プロセス指向心理療法では、このように、自己が同一化する対象を変える「布置の変化」がワークの特徴です。

「二次プロセス」とワークすることは、「一次プロセス」を相対化し、両者を統合することになります。
逆に言えば、「二次プロセス」として現れるものは、「一次プロセス」を中心にして生きることを批判し、修正を促すものなのです。
後述するように、たとえそれが病気のような身体症状であっても、一種の知性であると受け止めます。

シャーマニズムの部族社会の世界観では、本質的には「二次プロセス」を重視します。
シャーマンや部族のイニシエーションは、「二次プロセス」を体験し、それを中心に自己を組み替えるためのものです。


<リアリティの3階層>

プロセス指向心理学では、3つの意識、3つのリアリティの階層を考えます。

・合意的現実  :覚醒時の合理的現実、一次プロセス
・ドリームランド:ドリームボディ、二次プロセス中心
・ドリーミング :センシェント、エッセンス

「合意的現実(コンセンサス・リアリティ)」は、日常的現実であり、それに対応するのは、覚醒時の合理的意識です。

合理的意識は言語的で、「二元的」な対立の世界であり、排除や権力が存在します。

「ドリームランド」は、「夢」のリアリティですが、プロセス指向心理学では、夜の夢の中だけではなく、覚醒時にも常に存在して、身体症状などとして現れると考えます。
そして、この「夢」=「身体」的存在を「ドリームボディ」と呼びます。

「ドリームランド」には、「二元的対立」ではなく、「二極の交流」があります。

「ドリーミング」は、言葉やイメージの種となる「センシェント(微細な)」な意味の「エッセンス」の世界であり、その意識です。
ジェンドリンが、「フェルトセンス(感じ取られた意味)」と表現したものとほぼ同じです。
「センシェント」な意識は瞑想的な意識、変性的意識です。

この意識・リアリティは、覚醒時も含めて、一日中、常に存在しています。
身体としては、インド神智学の概念である「サトル・ボディ」が対応します。
この世界は、「非二元的」な一つの存在です。

「ドリーミング」という名称は、アボリジニーの「ドリーム・タイム」の影響を受けています。
「夢の創り手(ドリームメイカー)」とか、「大きな自己」とも呼ばれます。

また、ミンデルは、第4のレベルとして、自覚的な「プロセス」を考えます。
これは、3つのレベルの間を移動する自覚的意識です。

「ドリーミング」を対象としたワークでは、直接「エッセンス」を見つけてそれを感じることもあれば、夢のイメージなどからその「エッセンス」へ遡ることもあります。
そして、次に、それを「展開」して、イメージや言葉にしたり、擬人化して会話したりするのです。

「ドリーミング」の次元は、「一次プロセス」、「二次プロセス」の分離以前の次元です。
ですから、この次元を含むワークでは、「一次プロセス」によって「二次プロセス」を統合するとか、「二次プロセス」によって「一次プロセス」を相対化したりするとは考えません。
「夢の創り手」である「大きな自己」となって、その観点から全体を見て、「プロセス」を進展させることを促します。


<シャーマンズボディ>

ミンデルは、著書「シャーマンズボディ」で、プロセス指向心理学にシャーマニズムの思想や技法を取り入れる一方、シャーマニズム、特に、カルロス・カスタネダの思想をプロセス指向心理学の立場から解釈しています。

まず、ミンデルがシャーマニズムの特徴とするのは、プロセス指向心理学が「ドリームボディ」と呼んだ「夢=身体」が、周囲の世界と密接に結びついていると考える点です。
そして、この周囲の世界、部族の希望と結びついた身体を、「シャーマンズボディ」と呼びました。
この「シャーマンズボディ」は、「ドリームボディ」よりも、強くトランス状態と結びついています。

ミンデルは、シャーマニズムが、自然を含めた周囲の世界が、夢見られているものであり、また、一種の知性であると考えていると理解し、次のように書いています。

「アボリジニーの考え方によれば、…精霊たちは生きていて、今ここで起こっている出来事を夢見ていると考えられているのである」
「シャーマニズムは、周囲の世界が独自の知性を持ち、それもまたあなたの一部であるということを想起させてくれる」

ミンデルは、カスタネダの言う「第二の注意力」を、自我が締め出すものへの集中力、思いがけないプロセスに対する注意力、夢見の世界への鍵であると言います。

そして、カスタネダの言う「盟友」は、「二次プロセス」に対応する存在を、敵対的に受け止めない姿だと解釈し、次のように書きます。

「対立的な局面を克服すべき敵とは考えず、自分にとって最も力強い盟友となる潜在的な可能性を持つものとして理解する」

ですから、ミンデルは、「盟友」と自己を統合するべきもとだと考えます。

「自分が盟友に、盟友が自分に似てくることは、あなたが以前より統合され、自己の全体性を生き始めたことを示している」

ですが、「二次プロセス」を敵対的に考えないプロセス指向心理学の考え方は、カスタネダのトルテックよりも、サージ・カヒリ・キングのフナに近いように思います。

また、ミンデルは、カスタネダ(ドン・ファン)が言う「心ある道」を、「ドリーミング」に従う道であると解釈します。


<ワークと自覚>

ミンデルは、プロセス指向心理療法の手法には「自覚」だけしかないと書いています。

ですが、「自覚」にも様々な種類があり、具体的には様々な対象と方法があります。

ワークの基本的な方法は、特定の対象を選んで、それを十分に感じること、そして、それらになったり、それらの立場から考えたり、それらを擬人化してコミュニケーションをとって、その正体や希望などを尋ねたりすることです。
あるいは、それをイメージや動作などの様々なチャンネルで表現したり、物語として展開したりします。

もちろん、これらは、半覚醒・半夢見の意識の状態で行います。
また、日常生活の意識に戻って、以上の体験がどのように役立たせることができるかを考えます。

トランス的状態で、擬人化してコミュニケーションを行い、物語として受け止める点で、シャーマニズムの方法と共通点があります。

プロセス指向心理学のワークは「プロセス・ワーク」と総称されますが、その対象や方法によって、様々な名称が存在します。

以下、シャーマニズムと関連性のあるプロセス指向心理療法の「ワーク」の種類をあげて、簡単に説明します。


<ドリームボディ・ワーク>

一人で内面を対象にして行うワークは、「インナー・ワーク」と総称されます。
これには、以下のような様々なワークがあります。

夢のイメージや身体症状を対象にしたものは、「ドリーム・ワーク(ドリームボディ・ワーク)」です。
夜見た夢の続きを見たり、登場人物や気になるものを対象にして展開したりします。
身体の症状、痛みや慢性症状も「ドリームボディ」の表現と考えて、それを対象とします。

「ドリーム・ワーク」を二人で行うことは、「共に作り出すドリーミング」と呼びます。
これは、解釈者と一緒に夢見し、解釈するワークです。


<センシェント・ワーク>

「ドリーミング」の次元にある漠然とした「センシェント(微細)」な感覚、意味の「エッセンス」(種)を対象にするワークは、「センシェント・ワーク」と呼ばれます。
これは、ユージン・ジェンドリングの「フォーカシング」とほぼ同じです。
この「センシェント・ワーク」は、一種のトランス状態が求められます。

「センシェント・ワーク」では、直接「エッセンス」を見つけてそれを感じることもあれば、夢のイメージなどからその「エッセンス」へ遡ることもあります。
そして、次には、それを「展開」させます。
つまり、イメージや言葉にしたり、擬人化して会話したりするのです。


<フラート・ワーク>

プロセス指向心理学では、「ドリーミング」、「ドリームランド」、「合意的現実」の3つのリアリティ間に存在するものがあって、これらを対象とするワークも行います。

「ドリーミング」と「ドリームランド」の間にあるとされるのは、「フラート(フラッシュ・フラート)」で、これを対象とするのは「フラート・ワーク」です。

「フラート(魅惑するもの)」は、ふっと瞬間的に魅力を感じるもの、一瞬、心をよぎるものです。
あるいは、視覚で言えば、周りを見渡して、目を引くもの、なぜが気になって魅力を感じるものです。
ミンデルは、「フラート」がはっきりしない願い事に対する返答だとも書いています。

「フラート・ワーク」でも、まず、「フラート」の「エッセンス」を感じて、その後、展開します。


<秘密のドリーム・ワーク>

一方、「合意的現実」と「ドリームランド」の間に存在するものは、「ドリームドア」です。
これは「ドリームランド」への入口です。
これを対象とするのは「ドリームドア・ワーク」、あるいは、「秘密のドリーム・ワーク」です。

「ドリームドア」は、視覚的には、周りを見渡して、継続的に注意を引いて離さないものです。
会話の中では、今、ここ、私でない誰かとして語られるもの、繰り返し力説する話題だったりします。
他にも、不完全な文章、混ざる外国語、繰り返される言葉、思い出せない言葉、誇張されるもの、良く浮かぶメロディなども、「ドリームドア」かもしれません。

「ドリームドア」を対象にすると、夜に夢を見ない人でも、あるいは、夜に見た夢を対象としないでも、「ドリームランド」に入っていくことができます。

シャーマンが、気になる植物や物(パワーオブジェクト)を見つけるとそれを拾って、トランス状態でその魂(スピリット・ヘルパー)とコミュニケーションを行います。
シャーマンにとって、「パワーオブジェクト」は、一種の「ドリームドア」ではないでしょうか。

また、「ドリームドア」のワークもそうですが、日常生活を夢と捉えて、そのどこかに焦点を当てていくワークを、「秘密のドリーム・ワーク」と呼びます。
例えば、過去の記憶を夢と捉えたりして、それらとワークすることができます。

ハワイのネオ・シャーマンであるサージ・カヒリ・キングは、こういった夢見を勧めています。


<人間関係のワーク>

一人で内面に向かう「インナー・ワーク」に対して、人間関係を対象とするワークは「人間関係のワーク」と総称されます。
日常を対象にする「秘密のドリーム・ワーク」にも、これがあります。

「人間関係のワーク」で重視され、対象とされるのは、転移、投影、逆投影、「ランク(権力)」、「ドリーミング・アップ」、「シグナル」、「エッジ」、「ビッグ・ドリーム」、「センシェントなもつれ」、など数多くあります。

「ドリーミング・アップ」は、ある人の夢や無意識的な行為が、相手を刺激して感情を作るという作用です。

「シグナル」は、人が会話でコミュニケーションしている時に、本人が意図せずに、会話の内容と違うメッセージを、言い方や表情、動作などを通して送っていることがあります。
これを「ダブル・シグナル」と表現します。
こういった「身体シグナル」も、人間関係の中で表現される「夢」と言えます。
シグナルを対象としたワークは、「シグナル・ワーク」と呼びます。

また、社会全体との関係を対象とする場合は、「コミュニティ・ワーク」と呼ばれます。


人間関係にも「エッジ」があって、特定の人間に対して、何らかの感情から自分を制限している壁です。
「エッジ」を対象とするワークは「エッジ・ワーク」と呼ばれます。

ある人との長期的な関係を、最初の大きな体験の記憶や夢が規定する場合、その体験や夢を「ビッグ・ドリーム」と呼びます。
ミンデルは、それを一種の「神話」であると言います。

「センシェントなもつれ」とは、人間関係の中で、特定の誰かに属するような形のはっきりしたものではなく、関係の中に微細な雰囲気として存在するものです。
これを対象にするワークは、相手の体に触れていき、ある場所に何か感じたら、それに集中する方法で行います。

シャーマンが、部族の中で意識的に共有されていない問題を、トランス状態で物語として明らかにして、解決することがあります。
これは、「秘密のドリーム・ワーク」や「人間関係のワーク」、「コミュニティ・ワーク」の一種だと言えなくもありません。


<ワールド・ワーク>

「ワールド・ワーク」は、世界的に普遍的なテーマ(人種や男女の差別など)を取り上げて行う一種のグループをセラピーです。
グループをセラピー対象の個人と同様に捉えるのが特徴です。

個人のセラピーでは、「一次プロセス」、「二次プロセス」、「エッジ」を意識して、最終的に「ドリーミング」の観点に立ちます。
同様に、グループ対話では、主流派と非主流派、あるいは、発言されない意見(ゴースト・ロール)、話が進まなくなる「エッジ」などを意識しながら、「場」としての癒しのプロセスを進行させます。

この時、主流派と非主流派を同等に扱うことを「ディープ・デモクラシー」と呼びます。

一般に、部族社会では、こういった話し合いのファシリテーターは酋長です。
ですが、語られない、意識されない、非主流派や個人の問題は、無意識的なものであって、それをトランス状態の中で物語として明らかにするのはシャーマンの役割でもあります。
posted by morfo3 at 05:51| Comment(0) | ネオ・シャーマニズム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月20日

アルベルト・ヴィロルド

アルベルト・ヴィロルドは、ネオ・シャーマニズムの旗手の一人です。

彼は、ペルーの高名なシャーマンのドン・エドゥアルド・カルデロンをはじめ、アンデス、アマゾンのシャーマンに学んだため、マイケル・ハーナー同様に、トリップ体験をもとにした治療を重視します。
ですが、メキシコのトルテック系のカルロス・カスタネダやドン・ミゲル・ルイスのように、精神の解放も目的とし、さらに、エネルギー・フィールド(霊体)を利用した治療も行います。
また、ユング心理学にも興味を示し、イメージや象徴を重視して、心理療法のような手法も使います。

このように、ヴィロルドは、ネオ・シャーマニズムの諸潮流を統合する位置にいます。

*このページの記事は、姉妹サイトの記事をそのまま掲載したものです。

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<ヴィロルドの歩み>

アルベルト・ヴィロルドは、1949年、キューバ生まれの心理学者、医療人類学者です。

ヴィロルドは、サンフランシスコ州立大では博士号を取得し、同大学の非常勤教授時代には、生物学的自律研究所を設立しました。
そして、そこで、エネルギー医学の観点から、脳と心因性の病気や健康の関係を研究しました。

その後、研究範囲を広げて、精神の影響を対象とする必要を感じ、アンデスとアマゾンでシャーマンの治療法の研究を始めました。
1970年から79年にかけては、ペルーの高名なシャーマンのドン・エドゥアルド・カルデロンの調査を行い、弟子になりました。
ヴィロルドはこのシャーマンの影響を受けています。

こうしてヴィロルドは、独自のヒーリング手法を編み出しました。
彼の手法は、食からエネルギー・フィールドまでを含む全体的なものです。

ヴィロルドは、活動的な人物で、「フォー・ウィンド・ソサエティ」、及びチリの「エネルギー・メディスン・センター」のディレクターであり、「ライトボディ・スクール」の設立者です。

ヴィロルドには、共著「ヒーリングステート」(1987)を最初として、「シャーマン、ヒーラー、セージ」(2001)、「4つの洞察力」(2007)、「勇気ある夢」(2010)、「パワー・アップ・ユア・ブレイン」(2011)、「グロウ・ア・ニュー・ボディ」(2019)など、多数の著作があります。
日本で翻訳されているのは、「ワン・スピリット・メディスン」(2015)のみです。


<ワン・スピリット・メディスン>

ヴィロルドは、病気と治療に関して「ワン・スピリット・メディスン」という考え方、治療体系を提唱しています。
著書「ワン・スピリット・メディスン」によれば、これは病気の原因も治療法も一つである、というシャーマンの考え方です。

病気の原因は、「グレート・スピリット」からの隔絶であり、治療法は、すべての存在(グレート・スピリット)と一体になることです。

ですが、具体的な方法としては、次のように複数に分けられます。

・食事療法
・個人の内なる地図の塗り替え(エネルギー・メディスン)
・ヴィジョン・クエスト


「食事療法」は、断食、植物中心の食生活によるデトックス、スーパーフード、スーパーサプリなどによる栄養素の摂取、プロバイオティクスなどによる腸内環境の調整などです。

ヴィロルドは、大脳辺縁系に蓄積された制約的な信条、無意識のプログラムを「専制君主」と呼びます。
これは恐怖や怒り、苦悩などの有害な感情をつきまとわせるもので、トラウマ体験があればここに埋め込まれています。

ヴィロルドの「専制君主」は、カスタネダの「捕食者」やルイスの「パラサイト」に似た存在です。
ですが、ヴィロルドの場合、それを言語的なもの(左脳)とするのではなく、大脳辺縁系(哺乳類脳)の働きとする点が特徴です。

ヴィロルドは、「食事療法」がこの大脳辺縁系をアップグレードする力を持っていると言います。


次の「個人の内なる地図の塗り替え」というのは、個人のアイデンティティや人生観を変えることです。
この「地図」は、外界の認識や信条も作っています。

ヴィロルドは、これらを担っているのは大脳新皮質だと言います。
大脳新皮質のプログラムは、創造に関わるもので、「ワン・スピリット・メディスン」によって活性化されます。

大脳新皮質の右脳は神話によって起動します。
そのため、「新しい自分の神話」を見つけることで、「個人の内なる地図の塗り替え」が可能となります。

つまり、自分をヒーローとする神話的な人生の新しい自己イメージを作ることです。
そしてそれは、有機的・調和的な世界観と、死の恐怖のない全体との一体感を伴うものです。

ヴィロルドは、「日常的リアリティ/非日常的リアリティ」という区別を、量子力学の比喩から「粒子の状態/波の状態」と表現します。

夢や神話、エネルギー・フィールドは、「波の状態」に当たります。
「ワン・スピリット・メディスン」は、夢に見た世界を現実にしてくれると言います。
そして、神話は、エネルギー・フィールドに働きかけること(エネルギー・メディスン)で、健康になる遺伝子のスイッチをオンにすることができます。

「新しい自分の神話」作りには、「メディスン・ホイール」を利用すると便利です。
「メディスン・ホイール」は、4方位に動物を配置する世界観であり、それぞれの方向に対応する元型的な物語(地図)があります。
それらをつなげることで、全体としての「新しい自分の神話」を作ります。

1 南:蛇      :ヒーラーの旅
2 西:ジャガー   :聖なる女性性への旅
3 北:ハミングバード:賢者の旅
4 東:鷲      :ヴィジョナリーの旅

1の「ヒーラーの旅」では、過去の自分の社会的な役割を脱ぎ捨てます。
これは男性性の癒しの旅です。

この段階で行うヒーリング手法としては、不快な自分の役割を紙に書いて焼くといった儀礼的方法があります。
また、エネルギー・フィールドから古い刷り込みを消す「イルミネーション・ワーク」(詳細は後述)も行います。

2の「聖なる女性性への旅」では、女性性のエネルギー、死に直面します。
死の恐怖を解放するために未知への敷居を跨ぎ、女神から贈り物をもらいます。

この段階で行うヒーリング手法としては、やはり、エネルギー・フィールドから病気の痕跡を消し、チャクラの重たいエネルギーを解放する「イルミネーション・ワーク」を行います。

3の「賢者の旅」では、沈黙・静寂を学びます。
言葉のない沈黙の知によって、自分たちが現実を考えているものが幻想であり、共同で創造しているものに過ぎずないことを理解します。

この段階で行うヒーリング手法としては、呼吸に集中して自分を観察する方法があります。

4の「ヴィジョナリーの旅」では、自分が全体の一部であると理解し、創造に参加し、叡智を他人と共有します。
天上への旅によって、叡智を持ち帰ったりします。

この段階で行うヒーリング手法としては、未来の自分を「見る」ことで成長を促す方法があります。

以上の「新しい自分の神話」は、変性意識や夢見でヴィジョンとして見るのではなく、瞑想的な方法によって時間をかけて内面化するのでしょう。


次の「ヴィジョン・クエスト」は、「グレート・スピリット」とつながることです。
「グレート・スピリット」は、見えないマトリックス、宇宙の知的フィールドであり、生命を調和させる力です。

「ヴィジョン・クエスト」は、「メディスン・ホイール」の4つの物語を内面化できて始めて、試みることができます。

「ヴィジョン・クエスト」では、食事制限をした後、野外で3日間、動かずに過ごしてヴィジョンを得ます。
多くの場合、現れたパワー・アニマルと対話を行い、その動物になる想像をします。

また、「ヴィジョン・クエスト」とは違いますが、様々な「地下世界への旅」を夢見で行うことも、ヒーリングの方法です。(詳細後述)

「新しい自分の神話」や、ヴィジョンの旅など、ヴィロルドは、象徴的なイメージや心理療法的とも言えるようなヒーリングを重視するのが特徴です。


<光が輝くエネルギー・フィールド(LEF)>

ヴィロルドは、人間のエネルギー・フィールドを「光が輝くエネルギー・フィールド(LEF)」とか「ライト・ボディ」と呼びます。
LEFは、健康な状態では虹の色を放つので、「虹の体」とも呼びます。

LEFは、単に神経系の電気的活動によって生じるものではなく、身体、脳、神経系などを作り、調和させ、維持する情報を提供するテンプレート的存在です。
ここには、私たちの生き方、年齢、治癒方法、そして死ぬ可能性などの情報が含まれています。

このテンプレートには、私たちの個人的および先祖の記憶、幼年期のトラウマ、及び、以前の生の傷のすべての「アーカイブ」が存在します。

LEFは、「因果的(スピリット)」、「サイキック(魂)」、「感情的(心)」、「身体的」の4層から構成されています。
物理的なトラウマの痕跡は最外層、感情的な痕跡は2番目、魂の痕跡は3番目、精神的な痕跡は4番目の最深層に保存されています。

LEFの存在する病気の痕跡は、「イルミネーション・プロセス」(詳細は後述)によって消します。
これによってLEFの情報をアップグレードし、新たな神経網の形成を促したり、免疫系を強化して急速に病気を直すことができるようになります。


<イルミネーション・プロセス>

ヴィロルドが行うエネルギー・ヒーリングの中心にあるのは、彼が「イルミネーション・プロセス(イルミネーション・ワーク)」と呼ぶ方法です。

「イルミネーション・プロセス」は、「重い」生命エネルギーを、光に変換するもので、これによって、否定的な感情や行動を変え、免疫システムを強化して身体の治癒を促進させます。

「イルミネーション・プロセス」には、3つの方法があります。

・チャクラの汚れを燃やす。
・身体的および感情的な病気の痕跡の有毒なエネルギーを燃やす
・痕跡を綺麗にする

最初のチャクラの浄化法は、次のように行います。

まず、ヒーラーがLEFで患者を包み込んだ後、患者の頭を両手で抱きしめ、後頭部の下部に手を当てます。

そして、障害のあるチャクラに手を当てて、反時計回りに3〜4回回転させます。
これによって、チャクラの重いエネルギーが燃焼して排出されます。

次に、頭上の8番目のチャクラに輝く太陽を視覚化し、右手で光を集めて、患者のチャクラに金色の光のシャワーを浴びせます。
そして、後頭部の下部に手を再び持って行き、数分間、保持します。

最後に、チャクラを時計回りに3〜4回回転させてバランスを調整し、ヒーラーのLEFを閉じて、頭上の光球に戻します。


<集合点の移動>

ヴィロルドは、カスタネダが言う知覚の「集合点の移動」という考え方を継承しています。

ですが、ヴィロルドのそれは、カスタネダのそれとは大きく異なり、むしろ、ゴールデン・ドーンやクリヤ・ヨガの行法に近いものです。
ヴィロルドの方法では、4つのチャクラの場所に「集合点」を移動して、それぞれの意識を感じるのです。

ヴィロルドによれば、「集合点」はチャクラを介して受信した超感覚情報を知覚します。
そして、普通の人間の「集合点」は、グレープフルーツほどの大きさで、頭上6〜8インチの8番目のチャクラ(ウィラコチャ=グレートスピリット)の位置にあると言います。

「集合点」の移動は、次のように行います。

まず、患者の「集合点」の位置を、手の感覚を使って、体を走査することで見つけます。
感覚的には、異常に熱かったり、冷たかったりします。

そして、「集合点」の位置を頭上の8番目のチャクラに持っていきます。
次に、「蛇」の領域である基底部のチャクラに移動、保持し、それを感じてから、また、8番目のチャクラに戻します。

同様に、次は、「ジャガー」の領域である2番目のチャクラに移動、保持して、戻します。

次に、「ハチドリ」の領域である眉間のチャクラに移動、保持して、戻します。

最後に、「イーグル」の領域である頭上のLEFの外にある9番目のチャクラに移動、保持し、戻します。
そして、自然全体とのつながりを体験します。


<聖なる空間を作る>

ヴィロルドは、「聖なる空間」の瞑想(魔術的な結界)を重視します。
治療を行う時にも、トランス的夢見の状態で異世界への旅に出る時にも、最初にこれを行います。

これは、東西南北の4方向と、母なる地球と、父なる空の、6つのスピリットを呼び出す方法です。
4つの方角の動物は、南が「蛇」、西が「ジャガー」、北が「ハチドリ」、東が「イーグル」です。

次に、頭上の8番目のチャクラに、小さな輝く太陽を視覚化し、手をそこに触れて、その光が体を包み込むように降ろします。

最後に「小さな死の呼吸」を行います。
これは、吸気、止気、呼気のそれぞれで7カウントしながら、7呼吸することで、心を落ち着かせる方法です。


<地下世界への旅>

ヴィロルドは、様々な目的で、地下世界の庭や部屋への旅を行い、ヒーリングのために利用します。
旅は、基本的には患者自身が夢見として行い、ヒーラーはそれをサポートします。

例えば、次のような旅です。

・パワー・アニマルを見つける旅
・原初のエデンへの旅
・4つの部屋への旅

それぞれの場所に行くには、地下世界の門番に行先を説明して案内してもらいます。
それぞれの場所では、観察し、感じたり、会話をして知識を得たりします。


ヴィロルドは、パワー・アニマルとは、しばしばその人の無視された部分や影の部分を象徴するもので、人を自然のままの状態につなげると言います。

その獲得方法は、地下世界の聖なる庭に行き、石の上に座って待っていると、パワー・アニマルが背後から近づいて来るのです。
パワー・アニマルとは、会話をして、連れて帰ります。


「原初のエデン(プライベート・エデン、聖なる庭)」は、偉大な母の命を与える子宮であり、癒しを与えてくれる場所です。
「エデン」は地下世界にあるとも、地下世界がそのまま「原初のエデン」であるとも考えられます。

「原初のエデン」に行ってそこを観察し、そこで安らぎ、そこの自然と会話をすることで、自分の失われた魂の部分、恵みや無邪気さを取り戻すことができます。


「4つの部屋」というのは、「傷の部屋」、「契約の部屋」、「恵みの部屋」、「宝物の部屋」の4つです。
これらは「エデン」の一部と考えられます。

「傷の部屋」は、最初に行くべき場所で、魂の一部が逃げてしまうような、深く埋もれた傷を発見する場所です。
どのような傷を受けているか、象徴的・演劇的に示されるかもしれません。

「契約の部屋」は、次に訪れるべき場所で、自分が作った魂の約束を発見する場所です。
その契約をした年齢の自分と出会い、その契約の説明を受けます。
それは、自分を苦しめるような約束なので、再交渉してこれを変更するのです。

「恵みの部屋」は、癒された魂の部分がある場所です。
ここには、完全な状態の自分がいますが、その自分は、年齢、性別が今の自分とは違った姿をしているかもしれません。
ここで、失われた魂の部分を取り戻した、調和の贈物を探します。

「宝の部屋」は、生活に役立つ贈物を獲得する場所です。
何らかの能力を伸ばしたい時に訪れます。
この部屋と贈物には、表面的なレベルのものから、深層的な(芸術的な)レベルのものまでがあります。


以上のように、様々な目的で様々な異界の場所へ夢見の旅に出るのは、ネオ・シャーマニストの中では、ハワイのフナのサージ・カヒリ・キングに似ています。


<過去と未来への旅>

ヴィロルドは、「過去」や「未来」への旅も行います。
これを過去や未来へ延びる「エネルギーの追跡」と呼びます。

未来への旅では、何らかの問題をかかえた患者が、癒された状態の自分、成功した自分を見ることで、癒しを得たり、あるいは前向きに創造的になります。

過去への旅では、病気や何からの問題の原因が発生した過去の体験に戻り、その原因を見つけます。
そして、それを受け止めることで、問題を解決するよう前向きになります。
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サージ・カヒリ・キング

サージ・カヒリ・キングは、アメリカ人でありながら、2代続いてハワイのシャーマンの家の養子となって、ハワイのシャーマニズムである「フナ」の訓練を受けた人物です。
また、心理学者でもあり、アフリカのヒーラーからも学びました。

アメリカ大陸のシャーマニズムとは異なって、「フナ」は変性意識に入るのに幻覚性植物も太鼓・ダンスも使いません。
また、何かと戦う「戦士」の道ではなく、調和を求める「冒険者(愛)」の道を歩みます。

サージが語るヒーリング手法は多面的で、心理療法の観点から見ても、深い知見に基づく巧みなものです。
そして、精神の肉体への影響を重視し、ヒーリング(治療)と精神解放を一体で考えます。

ですが、彼が説くヒーリングの教えの中で、どこまでが伝統的なもので、どこからが彼のオリジナル、あるいは、現代的な心理療法の影響によるものかは、分かりません。

*このページの記事は、姉妹サイトの記事を再編集したものです。

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<サージの歩み>

サージ・カヒリ・キングの父のハリー・ローランド・キングは、医学と工学の学位を持ち、ビジネスと政府関係の仕事に携わっていました。
ですが、同時に、カウアイ島に住むシャーマン(カフナ、クプア)のジョセフ・カヒリに養子に迎えられ、その訓練を受けていました。

サージは、父の赴任地が変わるごとに各地に移住しましたが、14才の時からカフナの訓練を受け始め、17才の時に同じシャーマンの孫として養子になりました。
また、サージは、コロラド大学ではアジア研究を行い、アリゾナ州の大学院で国際経営学の学士を終了し、カリフォルニア・ウェスタン大学で心理学の博士号を取得しました。

1964年からは、7年間、西アフリカの救済開発支援プログラムに参加し、セネガル共和国の大統領から章を与えられました。
ですが、この時期に、サージは、アフリカの何人かのヒーラーに学びました。

1971年、サージがアメリカに戻ると、カヒリ家の叔父のワナ・カヒリから本格的に訓練を受け始めました。
そして、1973年には、ハワイのカウアイ島に移住し、「フナ・インターナショナル」という組織を設立して、フナの知識を一般の人に向けて教え始めました。

サージは、1975年、カリフォルニアのロス・パドレス国立森林公園で、神秘体験をして、新しい時代の預言者、光の教師となるべく召命を受けたと感じました。

サージは、「フナ・インターナショナル」の他にも、「アロハ・インターナショナル」を主宰するなど、多くの組織、プログラムに関わって活動をしました。

サージには多数の著作があります。
最初の著作は、「癒しのイメージ・トレーニング」(1981)ですが、この書はフナについては書いておらず、フナに関する初めての書は、次の「ハワイアン・ヒーリング(原題:Kahuna Healing)」(1983)です。
その後、「Mastering Your Hidden Self」(1985)、「アーバン・シャーマン(原題:Urban Sharman)」(1990)、「フナ 今すぐ成功するハワイの実践プログラム(原題:Huna: Ancient Hawaiian Secrets for Modern Living)」(2008)、「Instant Healing」(2020)などを出版しています。


<フナとカフナ>

ハワイのシャーマニズムを「フナ」と呼びますが、この言葉は「秘密(の知識)」といった意味です。
ハワイのシャーマンを「カフナ」と呼びますが、この言葉は多義的で、「専門家」、「司祭」、「ヒーラー」などを意味します。
シャーマンそのものに関しては「クプア」という言葉もあります。

ワナ・カヒリが語るカフナの伝承によれば、「フナ」の知識はムーに由来し、代々、息子か養子へと継承されてきました。
「フナ」の哲学は、1700年にまとめられた創造の歌「クムリポ」に歌われています。

「カフナ」には3つの流派があります。
感情派の「ク」は、宗教、政治、戦闘の技術を持ち、感情の解放や、環境に対して直接的なコントロールをしようとします。
知性派の「ロノ」は、薬草や農業、航海術などの知識を持ち、環境の法則を理解することを重視します。

そして、カヒリ家の属する直観派の「カネ」は、霊的教えや魔術の技術を持ち、霊的統合や自分の完全なコントロールを目指します。
また、想像力のコントロールの訓練や、思考が肉体に与える影響を重視します。

サージは、「ハワイアン・ヒーリング」(1983)で、「カフナ」全体で25人、カネ派は6人しかいないと書いています。
また、「アーバン・シャーマン」(1990)では、「カフナ」の教師は5、6人で、皆、アメリカ本土で教えていると書いています。

「フナ」の研究の先駆者に、マックス・フリーダム・ロングがいます。
彼の時代には、「フナ」は法律で禁止されていたため、彼は「カフナ」に会うこともできませんでした。
そのため、ハワイ語の中に暗号化された「フナ」の知識を研究しました。
彼の主著は「奇跡の背後にある秘密の科学(邦題:原展ホ・オポノポノ 癒しの秘法)」(1948)です。

また、彼は、「フナ・リサーチ・インク」を設立しました。
ですが、彼の研究には多くの批判もなされています。

サージは、ロングはいくつかの間違いを犯したとしながらも、先駆者として評価しています。
また、「フナ・リサーチ・インク」にも所属しています。

また、「カフナ」として、「フナ」を最初に知らしめたのは、デーヴィッド・カオノヒオカラ・ブレイです
彼は、1960年にカリフォルニアに渡って、「フナ」を教え始めました。


ハワイのシャーマンの特徴は、「戦士」の道ではなく、「冒険者」の道だということです。
「戦士」が、恐れ、病気、不調和などを擬人化してそれと戦うのに対して、「冒険者」は、それらを擬人化せずに作用として扱い、愛と協力、調和をもって対処するのです。 
「戦い」の比喩は、ストレスを生むので、「フナ」では使用しないのです。

また、ハワイのシャーマンは、アメリカ大陸のシャーマンと違って、仮面、太鼓、ダンス、幻覚性植物を使わずに、つまり、瞑想や夢見に類した方法でトランス状態に入ります。

そして、精神の肉体への影響を重視し、そのヒーリング手法は多面的で、精神の解放と一体的に考えます。


<7つの原則、4層の現実>

サージは、次のような「フナ」の七つの原則的な考え方と、それに対応する行動原理をあげています。

・あなたの考えが世界を作っている(すべては夢であり任意である)
 →自分が現実を作る(イケ)

・限界は存在しない
 →自分に限界を作らず自由になる(カラ)

・エネルギーは意識を向けたところに流れる
 →目標へ集中し成功への意欲を高める(マキア)

・力は今この瞬間に存在している
 →今に集中し、すぐここで始める(マナワ)

・愛することは幸せになること(自他への批判がないと愛が生まれる)
 →幸せになることを楽しみ感謝する(アロハ)

・すべての力は内面から現れる
 →内なる力を信頼する(マナ)

・効果の有無が真実の尺度である(いつも別な方法がある)
 →積極的な姿勢で最高を期待する(ポノ)

つまり、「フナ」では、否定的・限定的な信念を肯定的・調和的な考えに変えることを重視します。
そして、その肯定的な考えを信頼して、目標に集中し、それを実現させようとします。
また、自他を批判せずに許し、祝福し、他人が夢見ることを助けます。


一般に、シャーマニズムは2つのリアリティを区別することが基本とされますが、「フナ」は、現実を次の4つのレベルで見ます。

・霊的世界 :すべては全体的・一体的(神秘的な現実)
・意識的世界:すべては象徴的(シャーマニックな現実)
・主観的世界:すべては主観的(心理的現実)
・物質世界 :すべてが客観的(科学的現実)

「フナ」では、思考内容が物質世界に反映・凝縮されると考えます。
また、すべてのものは、たとえそれが物質であっても、ハイヤーセフルを持っていて、変性意識状態で意識的にコミュニケーションできると考えます。


<人間の3つの意識の統合>

人間は、次のような要素から構成されています。
それぞれは神の名前でもあります。

まず、3つの意識の構成要素があります。

・カネ(アウマクア):ハイヤーセルフ、調和をもたらす
・ロノ:顕在意識、知性、信念、判断を司る
・ク :潜在意識、本能と習慣を司り、ロノがプログラムした命令に従う

そして、身体的要素があります。

・アカ:エーテル体
・キノ:肉体、カネの思考が形として凝縮されたもの

「フナ」のヒーリングは人間の全体を対象とします。
肉体に対する手法は、薬、食事など、エネルギー的手法は、マッサージ、フラ・ダンス(=動的ヨガ)などです。
そして、精神的手法は、思考や習慣を自覚して置き換えることです。

フナでは、病気は、思考や感情のエネルギー間の争いによる緊張から生まれると考えます。
そのため、ヒーリングは、「ロノ」の「信念」や「習慣」を自覚して書き換えることが中心的課題となります。
「信念」というのは、前提・態度・意見の複合体で、その反応が感情です。
その時、潜在意識(ク)を参加させて、行動、感情を伴ったものにすることが必要です。


「ロノ」の信念や記憶は、体(キノ)に組み込まれます。
例えば、感情的なストレスが肉体の症状となるように。
そのため、逆に、意識的に筋肉をリラックスさせると、習慣的な反応を止めることで、感情を解放することができます。

ヒーリングは、最終的には「カネ」との一体化の結果であるとされます。

そして、全要素を統合した完全な人間は「カナロア」と呼ばれます。
これは癒しの神の名前です。

統合への道を「ハイプレ」と呼びます。
「ハイプレ」のための基本的な意識の持ち方は、先に書いた7つの原則です。

全体的な統合を行うためには、まず、「ロノ」と「ク」を統合します。
すると、自然に「カネ」も統合されます。


また、上記の3つの意識の構成要素とは別の観点で、4つの意識レベルが存在します。
これは先に述べた4つの現実と、ほぼ対応します。

・パパカウナ(神秘的):宇宙と一体化する
・パパコル(相対的) :すべてが相互作用している
・パパルア(心的)  :メンタルな方法で外界に働きかける
・パパカヒ(物質的) :日常生活


<異界への旅>

トランス状態での異界への旅はシャーマンの特徴です。
これらは、広義の「夢見」であり、「ヴィジョン・クエスト」と表現されることもあります。

「フナ」における世界観は、他のシャーマニズムと同様に、天上世界、中間界、地下世界の3世界からなります。

天上世界の「ラニケハ」は、英雄、「パワー・アニマル」、守護霊・先祖である「アウマクア」や、様々なスピリットである「アクア」がいる、助言やインスピレーションを得る場所です。

マイケル・ハーナーのネオ・シャーマニズムでは、「パワー・アニマル」は地下世界にいるのですが、「フナ」では天上世界にいます。
「パワー・アニマル」は「アクア」の一種です。

「パワー・アニマル」は複数持つことができて、例えば、7つの原則的な考えに対応する7つの「パワー・アニマル」を持ったりします。
「パワー・アニマル」と出会うと、その姿になり、「ティキの庭園(詳細は後述)」に来てもらったり、贈り物をもらったりして庭園に持ち帰ります。

「アウマクア」と出会うためには、例えば、自分の内側に本質を感じ、今の周りの環境を褒め、エネルギーを感じて、光に囲まれるのを感じます。
そして、道を進んで行くと、賢者の姿などをした「アウマクア」と出会います。
「アウマクア」にも、庭園に来てもらうことができます。


中間界の「カヒキ」は、通常の夢の場所であり、また、「ティキの庭園」や「パリ・ウリ」がある場所です。

「ティキの庭園」は個々人を反映する特別な場所であり、他の場所へ行くための出発地です。
「天上世界」へは、飛ばずに、樹を登って空の穴を抜けるなどして行くと、その道を逆に辿って戻れます。
一方、「地下世界」へは、洞窟や穴を降りていきます。

「パリ・ウリ(バリ・ハイ)」は、不思議の場所であり、先輩シャーマンがいて、様々なことを教えてくれます。
ここは新しいあり方を発見する世界があり、そこには火山の島で、ボートに乗って行きます。


地下世界の「ミル」は、悪夢と試練の場であり、「力」を象徴する物(宝物やパワー・オブジェクトなど)として取り戻す場所です。
邪魔をする怪物などもいますが、これらは思考の枠の象徴です。

地下世界に行く時は、「パワー・アニマル」に同行してもらいます。
フナの「冒険者」の道では、「ミル」で牙を向いた邪魔者に出会っても、それと戦ったり、避けたりしません。
それに微笑み返し、友好関係を結びます。
もし、襲われても、喰われたらその怪物の腹を通って変容し、尻から出て、先に進みます。

患者の治療ために「パワー・オブジェクト」を探しに行く場合は、そのエッセンスを現実世界まで持ち帰って患者に注入し、また、それを象徴する現実の物を渡します。


<ティキの庭園>

先に書いたように、中間世界にある「ティキの庭園」は、個々人を反映する場所であり、他の場所へ行くための出発地です。

この庭園は、自分の心身の隠れた状態が現れる場所であり、同時に、そこを手入れすることで治療することができる場所です。
それは、「力」の場所であり、「智恵」の場所です。

最初に、自分の無意識にこの庭園を作ること、そして、そこに何らかの心の問題などを象徴的に表現してくれるように依頼します。
そして、毎日、そこを訪れて、観察し、手入れします。

問題があると感じた部分を手入れすると、自然に問題は解決されます。
それが何を表現しているのかを、解釈することは必要ありません。

この庭には、「ヘルパー」がいるので、彼に助言から得ることもできます。
また、そこに何らかのスピリット(アウマクア、パワー・アニマルなど)を呼び、力をもらったり、会話をしたりして智恵を得ることもできます。

患者のヒーリングのための夢見を行う場合は、患者の庭園に入って、そこから天上世界や地下世界に行き、庭園に力をもたらします。

カスタネダの「夢見の中でやって来る場所」は、現実にも存在する場所として設定されますが、その特徴は「ティキの庭園」に似ています。


<様々な夢見の技法>

「フナ」では、異界への旅としての「夢見」以外にも、様々な目的で「夢見」を行います。

一つは、一般的な意味での「夢見」、つまり、明晰夢です。
これは、夢の中の行動を変えることです。

「冒険者(愛)の道」である「フナ」では、例えば、いつも怪物から逃げる夢を見ていたとすると、逃げずに、その怪物に、なぜ落いかけるのか聞いてみるのです。
すると、その怪物は、追いかけているのではなく、着いて行っているのだ、あなたはどうして逃げるのか、と答えるかもしれません。

もう一つの方法は、過去の経験の書き換えです。
トラウマのようになっている記憶があれば、それを受け入れたり、解釈し直したりするのではなく、肯定的な方向体験そのものを書き換えます。
「フナ」によれば、記憶は、事実ではなく、単に、夢と同じものなのです。

「夢見」と似て非なる方法で、「夢見」の延長で、自然などを操作する呪術的方法があって、これは「グロッキング」と呼ばれます。

例えば、雨雲になりきって、雨雲が雨を降らせる夢を見て、実際に、雨を降らせます。
あるいは、自分の足を怪我したとすれば、その部分自身が治るような夢を見て、直します。
他人のヒーリングの場合も、その人自身になりきって、治る夢を見たり、実際に、自分を治療します。


<ナル(融合)の瞑想>

「フナ」では、様々な「ナル(融合)」の瞑想を行います。

「ナル」という言葉は、「平和な融合」、「協力的な関係」といったことを意味します。
「ナル」の瞑想は、判断せずに、ただ、対象に静かに気づいている状態を維持する方法です。
ヴィパッサナーや禅の瞑想に似ています。

気づきの対象に対して中立的ないしは肯定的(おだやかで心地よい期待感)でいれば、対象にエネルギーが流れて、対象が活性化され、肯定的な変化をすると考えます。
この点では、ゾクチェンの瞑想思想に近い考え方でしょう。

また、「ナル」を行えば、対象とつながり、無意識はそれを真似て学習します。

「ナル」の方法や対象は様々です。
「ナル」は一つの瞑想法というより、瞑想の種類といった方が良いのかもしれません。

「見るナル」は、「美しいもの」、「美しいと思っていないもの」、「慣れ親しんだ環境」、「自然」などを対象とします。
「美しいもの」を対象にすると、心も調和を持ち、美しくなります。
他の場合も、今まで気づいていなかったものに気づき、何かを直観的に学ぶことができます。

また、目を動かさずに視界の端を見たり、視野の全体を意識したりします。
すると、習慣の外に出ることになるので、普段の思考のくせを理解することができるようになります。

「聴くナル」も、「見るナル」と基本的には同じですが、音、音楽、暗示的言葉などを聞いて意識します。

「触覚的なナル」は、何か行動をしている時に、その体の動き、その感覚を意識します。
また、ダンスを行ってそれを意識したり、呼吸を意識したりします。
これらによって、体や感覚への感謝や喜びを感じることができるようになります。

「全感覚的なナル」は、例えば、歩きながら、今感じているすべての感覚を意識します。
これらによって、やはり感覚への感謝や、環境とのつながりを感じるようになります。

「考えるナル」もあります。
これは、何か抱えている問題があれば、それについて判断せずに、集中します。
すると、抱えていた問題が変わってしまうことがあります。
別の観点が現れて、問題を見る角度が変わったり、以前自分が立っていた枠組の外に出ることで、問題が問題でなくなってしまったり、ということが起こります。

このように、「ナル」は一種の気づきの瞑想ですが、ヴィパッサナー瞑想のように対象への執着をなくすという方向ではなく、対象を豊かにし、感謝し、学ぶという方向性で瞑想します。


<自他の許しの瞑想>

「フナ」では、自他を「許す」ことが重視されます。
批判は「愛」に反する否定的行為であり、自他を批判することはストレスになります。
逆に、「許す」ことは、エネルギーを解放することになります。

ハワイには、集団の問題を解決するための、「許し」を含む伝統的な儀式「ホオポノポノ」がありました。
1976年に、これをもとにして、「フナ・リサーチ・インク」のモルナー・シメオナが、個人向けの「許し」の儀式「セルフ・アイデンティティ・ホオポノポノ」を開発しました。
さらにそれを、イハレアカラ・ヒューレンが簡略化して、広げました。

サージが語るカヒリ家流の「許し」の儀式は、それらと区別するために、「クポノ」と呼ぶこともあります。

その方法は、まず、最初に「アウマクア」に、自分達の間違いを許すのを感謝します。
そして、問題を語り、それに関する告白をします。
次に、他人を許すこと、問題が消滅したことを宣言します。
そして、抑圧されてきた感情を聖なる光に変えます。
最後に、「アウマクア」に感謝します。

呼吸法とともに行う許しの方法に「ホオポノポノ・イキ」があります。
まず、深くゆっくり呼吸をして、身体を出来るだけリラックスさせます。
次に、息を吸いながら心の中で自分の名前か、「私のアウマクア」と言います。
そして、息を吐きながら「私は自分の怒りを解き放す」、「私は○○を許す」と言います。
この呼吸と宣言を少なくとも三回ずつ、自分自身をより良く感じるまで繰り返します。

また、なかなか許し難い他人を許すための瞑想法があります。
これは、相手に何かをあげることをイメージします。
最初は、無理のない範囲でちょっとしたものを贈りますが、徐々に贈物を大きくしていきます。
posted by morfo3 at 05:28| Comment(0) | ネオ・シャーマニズム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする